3:自然体で問いかける(ソクラティック・メソッド)
自然体で問いかけることは、第6章で解説したものとクラス会議においては少し異なります。
相互尊敬のモデルを示し、子どもに彼らの個人的認知の発達を許容するもっとも大切なスキルの一つは、オープンエンドの質問です。
あなたが伝えたいと思うあらゆることは、この質問フォームに置くことができます。
もしあなたが、子どもたちがあまりにもうるさいと思っていることを伝えたいときは、
「今ここがあまりにもうるさいと思っている人は何名いますか?」
と尋ねます。
次のどちらのやり方でも効果は見られます。
何人がうるさいと思っているか聞いてもいいですし、何人がこれでいいと思っているかを聞いてもよいです。
あなたが自分の見方をただ押し付けることを少なくすればするほど、子どもたちは彼ら自身のために考えるようになっていきます。
大人が伝えたときに子どもたちが拒否した説教や道徳的な説明と同じようなことを子どもたちのなかであがってくることは、よくありますし、非常におもしろいところです。
オープンエンドの質問は、ネガティブな雰囲気をポジティブに変えます。
次のような例です。
先生は、学校でよく問題を起こすステファンについて、カウンセラーに助けを求めました。
カウンセラーは一番よい方法はクラス会議を通すことだと感じました。
先生は一度もクラス会議を開いたことがなかったので、カウンセラーがこの機会を使って、デモンストレーションをしました。
カウンセラーはステファンに教室をでて、図書館に行くようにお願いしました。
基本的なルールとしては、その場にいない生徒について話し合うことはしないのですが、この場合は、彼がいると、ポジティブな雰囲気を創れないだろうと分かっていたのと、他の生徒からのコメントでステファンが傷ついてほしくなかったので、そのようにしました。
クラス会議は、だれがこのクラスで一番の問題児かということから始めました。
生徒は口をそろえて、「ステファンだ」と言いました。
彼らに、「ステファンがどんな問題を引き起こすのか」を尋ねました。
子どもたちは、ケンカ、ボールを盗む、ののしる、悪口を言う、などと言いました。
最初の質問は、これまで生徒たちが思っていたこと、感じていたことを表現することを許容しました。
次の質問は、子どもたちがポジティブな思考や感覚になるようにした質問です。
「なぜステファンはそういうことをするのでしょうか。」
回答は様々で「彼は意地悪だから。」とか「彼は暴力的だから。」といったものが含まれていました。
最後に、一人の生徒がいいました。
「たぶん彼には友達がいないからだよ。」
もう一人の生徒がうなづきながら、ステファンは里子なんだと話しました。
里子がどういうことかをみんなで話し合い、理解した後、子どもたちは、家族と離れることがいかにつらいことなのか、引っ越しをたくさんすることがいかに大変なことなのかということなどを出し合いました。
彼らはステファンに対して敵意の代わりに、理解を示すようになりました。
「ステファンを手助けしてくれる人はどれくらいいますか?」と尋ねると、クラスのすべての生徒が手をあげました。
黒板には、子どもたちができるあらゆる手助けのリストが書かれました。
学校に一緒に来る、休み時間に遊ぶ、お昼ご飯を一緒に食べる、ほかにも10個のアイディアが出されました。
それぞれの提案されたことがリストにされ、だれがそれをするかということが明確にされました。
その後、カウンセラーはステファンに彼が学校で抱えていた問題についてクラスで話し合ったと伝えました。
どれくらいのクラスメイトがあなたを手助けしたいと言ったと思う?と尋ねると、彼はうつむいて、だれもいないでしょ、と言いました。
クラス全員があなたを手助けしたいと言いましたよ、と伝えると、顔をあげ、目を大きく開けて、信じられないといった表情で「みんなが?」と言いました。
ステファンがこの出来事を境に、非常に勇気づけられたと感じたことは明らかでした。
クラス全体でステファンを助けようと決めた後は、その決まったことをやり抜くことで、ステファンは所属感を感じ、彼の行動は劇的に改善しました。