小中一貫校の視察について

今日は教育アクションプラン推進会議委員の一員として、教育委員会主催で、静岡県浜松市にある庄内学園(浜松市立庄内小学校、浜松市立庄内中学校)でお話と施設見学をしてきました!


地域の小学校と中学校を統合して、小中一貫校としてスタートして今年で3年目が終了。

詳しくはこちら・・・庄内学園

小中一貫校。義務教育学校と呼ばれたりしていますが、一体なにがいいんだ?という疑問を持つ方も結構いらっしゃるようです。

 

今(少し前かな)、「中1ギャップ」という言葉が使われています。

ざっくりいうと、小学校から中学校に進学したものの、そこでのギャップを乗り越えられず、精神的にまいってしまう感じです。

小中一貫校は様々な課題解決に向けた取り組みではありますが、こういったことの解消も含まれています。

その点については、確実に成果が出ているとのことです。

やはり「同じ空間で過ごす」ということだけでも、「見通し」が立つようになり、「安心感」が生まれるようです。

それは子どもだけではなく、保護者も同じようで、小中一貫校にして、親からのポジティブな意見としては「安心感」が一番だったようです。

施設面のハードも見学させていただきましたが、ソフトの方を。

 

【ダイナミックな活動を可能にしたのは・・・】

2つほど事例を。

小中一貫校。当初は4・3・2という分け方をしていたそうです。中1ギャップをということを考えると、小6と中1を一つのまとまりにしたらいいのかも?という前提なのでしょうか。それに則ってやったそうです。

しかし、そうするとどうしても学習内容が違う小学生と中学生をいっしょにやらなければならなくなり、無理がでてくることがたくさんあったそうです。また、小6が最高学年といった感覚を持てない、また、卒業式がない事への違和感が多くあったようです。卒業式は保護者からの意見も多くあったそうです。

そこで、本来卒業式はやらずに、修了式だけで終わる予定だったものを、スタート初年度にすぐに変更し、卒業式を開催されたとのことでした。すべてが新しいスタートのなか、初年度で最初の決まり事を変更するというのはなかなかできないのではないでしょうか。とりあえずやってみようとなるところを、「とりあえず」をしなかったということです。これが1つ目。

2つ目は、4・3・2の分け方をすぐに4・2・3に変更したということでした。初年度のアンケート結果、小6のみ自尊感情が明らかに低いというアンケート結果がでたそうです。現場の先生も、保護者も同様に感じていたようで、すぐに変更したそうです。これは卒業式という単発のものではなく、学校全体に関わることなので、これだけスパッと変えられるのは早い決断だな、と思いました。

ほかにもたくさんの事例がありますが、これを可能にしたのが、

「(与えられたもの・既定路線のものを)どうやるか?ではなくて、なにをつくるか?」

からスタートしているからだと思います、というようなことをおっしゃっていました。(私の解釈です。)

すべての先生を巻き込んでの学校づくり、ということだと思います。

そこには主体性があり、対話がありました。まさにアクティブ・ラーニング。

そして、私が学んでいるMITの学校改革プログラムでも言われているいことでした。

枝葉について話すのではなくて、幹についてしっかりと先生同士で話し合う。

そういったプロセスがあったからこそ、その周りにあるものが変わっても動じないのだと思います。

大黒柱をみんなでつくる。その過程を共有する。

それがこのダイナミックな動きを可能にしていると思いました。

 

【予想を超えたところは・・・】

多くの方が考えて作り上げたシステムでしょうから、中1ギャップの解消や子どもたちの安心感などはある程度予想はできたことだったかな、と思いました。

それだけを知りたいならば、HPを読めばある程度予測はつきます。でも現場にいったので、やっぱり現場の方が感じていることを知りたいなと思って、こんな質問を。

「予想外、あるいは予想を超えてよかったことはなんですか?」

小学生・・・中学生とともに過ごすことで、大人が思う以上に先を見据えるようになった、ということでした。

校内には様々な掲示物がありました。そこに小6の優秀な掲示物が張り出されています。校長先生がおっしゃるには、小学校だけだったら、さすが6年生だね、という雰囲気になり、6年生自身もそれを誇らしく思って終わり、という感じだったけれど、中学生が一緒になることで、中3の掲示物などを目にすることになり、誇らしさとともに、中学生になるとあれくらいになれるんだ!なりたい!という目標を持っている感じがするそうです。

中学生・・・優しい

中1~中3という狭い年齢幅のなかだと、どうしても優劣意識がでてしまうようですが、そこに小学生が加わることで、そういったものが緩和されるようです。小1に向かっていきがってもどうしようもありませんもんね(笑)

また、いっしょに運動会をすることで、中学生が小学生を応援したり、小学生が中学生を応援したりすることになります。そういったなかで、中学生が自分の優しさや良さ(応援されるので)に気づいたりするのだろう、ということでした。

今は全体的に「THEツッパリ」というような生徒はあまり見かけませんが、そういう感じの生徒はいないですね~とのことでした。

確かに画一性が高いところでは競争原理が色濃くでてしまうけれど、3年という幅から、一気に9年という幅に広がれば、そこに多様性が生まれ、それぞれの良さが生まれることは十分にありえるだろうな、と思いました。

 

教員・・・壁を越えようとする力の発揮。

小中、職員室がいっしょです。小学校と中学校では文化が違います。しかも結構違うと思います。それでも、同じ空間で過ごすことで、その壁を乗り越えていこうとする力が湧いてくるそうです。もちろん職員室はリノベーションされていて、パーテーションなどの区切りはできる限りなくしてあります。学校側も、もちろん様々な働きかけはされていますが、この教員の変化は予想以上のようでした。

これは学校に限らずどこの組織でも起こりうること。いわゆる風通しというやつでしょうか。お話を聞いていると、今はもう学校側からというよりも、みんなでいっしょに、という雰囲気を感じました。

 

【小4の力】

自分の専門分野が中学生ということもあり、そちらにばかり目が行っていましたが、4で区切った小4の力の発揮には私が驚くとともに、なるほどな~と納得でした。

小1~小4を「初等部」とし、小4を「初等部リーダー」としていました。校舎も別棟にするなど工夫されています。清掃も小4をリーダーとしてのグループ、また、遠足も「初等部遠足」ということで、小4をリーダーとして行っているとのことでした。発達段階を考えても、これから思春期を迎えるというところを考えても、なるほどな~と思う取り組みでした。この段階でリーダーシップを感じられるのはよい機会だと思いました。

 

 

ということで、授業スタイルの構築や研修スタイル、地域との協働など、まだまだ聞きたいことがたくさんありましたが、時間がきてしまい、ここで終了。

今回は3つ取り上げましたが、とにかく動き続けている、という感じでした。

大きな改革というよりは、小さなチャレンジを日々行っているという感じ。

そして、そのチャレンジを振り返り、またチャレンジ。

デザイン思考をそのまま具現化した感じでしょうか。

もちろん大変なこともかなりたくさんあったようです。今もあると思います。

でも、新しいことをするときは必ずそういうものはつきものです。

そこについて質問をするよりも、ポジティブな面に目を向けた方が力がでるかな、と思い、あえてネガティブな面は質問しませんでした。

 

瀬戸市はおよそ倍の学校の数が統合されて、1からつくられる小中一貫校なので、ハードの面では様々な違いはあると思いますが、「どうだ!」というような大方針ではなく、生徒とともに、先生とともに、地域とともに日々チャレンジしていくという姿は十分に参考になることだと感じました。

 

校長先生、教頭先生、お三方とも、大変真摯に質問に答えてくれました。ありがとうございました。