未来を生き抜くチカラを育むために 講演原稿

今日は多治見で、「未来を生き抜くチカラを育むために」というタイトルで講演をさせていただきました。

以下、お話した内容です。多少違うところもありますが、ほぼ同じです。

もしよろしければどうぞ。

自己紹介

みなさん、こんにちは。只今ご紹介にあずかりました一尾と申します。

今ご紹介いただいたように、「教育」というものをベースに様々な活動をさせていただいております。

今ご紹介いただいた中に、脳の活性化プログラムの講師ということでしたが、毎回その紹介代わりに、脳を活性化させるとこんなことができるようになりますよ、ということで、最初に瞬間記憶をお見せしています。少しご協力していただけますか?

・・・・・・・・

という感じです。脳科学ということに関しては、素人ですが、脳をどのように使えばいいのか?という実践においては、プロフェッショナルだということです。よろしくお願いします。

 

全体の流れ

では、本題に入っていきますね。

今回のタイトル、未来を生き抜くチカラを育てるために、ということで、大きく3つお話させていただきたいと思います。1つ目は、未来を生き抜くチカラってなんなんだ?ということ。2つ目はその力を育むためにできることはなにか?というこで、脳の活性化プログラム講師として脳の特性の側面から、3つ目はその心理面からお話したいと思います。よろしくお願いします。

また、今回の講座ですが、アクティブ・ラーニングという学び方にみなさんに取り組んでもらう。これは、自ら学び、人と話して協力をし、学びをその場だけで終わらせない、そういうものです。子どもたちはそういう学びをしていくわけですから、大人もいっしょにやるべきだと私は思っています。ですから、今日は二人組になってもらって、いろいろとお話していただく機会を設けます。人と話すことは、なかなかエネルギーがいることかもしれませんが、ぜひがんばってくださいね。よろしくお願いします。・

 

未来を生き抜くチカラとは?

まず、最初、未来を生き抜くチカラ、ということです。これは今回のタイトルにもなっているかと思いますが、果たしてみなさんは未来、と聞いてどれくらい先のことをかんがえるのでしょうか。100年先でしょうか、50年先でしょうか、今日生まれた子どもが成人するころでしょうか。それとも今小学生が大人になる10年後でしょうか。今日はみなさん、どんな感覚で来られたのでしょうか。ちょっとお隣の方と、確認してもらえますか?「どれくらい先の未来だと思っていますか?」と聞いてもらえますか?」といった人が先ですよ(笑)

 

ペア・トーク

 

はい、ではちょっと聞いてみましょう。挙手をお願いします。10年後だと思った方、20年後だと思った方。

ありがとうございます。

10年後であれば、2027年、20年後であれば、2037年。

ざっくりいえば、2030年、2040年といったところでしょうか。

さて、そのころどんな課題が発生していると思いますか?

みなさん、スマホをお持ちですか?

では先ほどの方と片方の方は、2030年問題で検索を、片方の方は2040年問題を検索してみてください。そして、お互い「こんな問題があるらしいよ~」と情報を共有してみてください。

 

ペアトーク

 

はい、ありがとうございます。

 

では、何名かの皆さんに、聞いてみましょう。

 

会場へ質問

 

はい、・・・・・・・

ありがとうございます。

 

こういった未来が予想されているわけです。

どれが本当かは、なってみないとわかりません。

でも、この予測なしに「ミライを生き抜くチカラ」を考えてしまうと、的外れなことになってしまうと思います。

今お子さんが小学生4年生10才だとすれば、2030年には、23才、2040年には、33才ということになりますね。

 

では、そんな未来を生き抜くために、どんなチカラいると思いますか?

話し合っていただけますか?

 

ペアトーク

 

なるほど。では、いくつか聞いてみましょう。

 

会場へ質問

 

はい、これも答えはありませんね。

一応いろんな機関が考えたものがあります。

スマホで「21世紀型スキル」と調べるとでてきます。

調べてみてもらえますか?

ない方ように、こちらに映しておきます。

 

たくさんあるんですが、今回は特に思考の方法にあるなかで、特に意思決定というところに注目してみたいと思います。

 

意思決定。これも様々な段階があると思いますが、しっかりと身に付けたいのは、この意思決定、つまり「自分で決める」、ということだと考えています。これは私も指導のなかでとても大切にしているところです。

この「自分で決める」ということが、いろいろな力をつけるにあたってとても大切だと思っていますので、本日のお話に関しては、「自分で決める」という力の付け方についてお話してみたいと思います。

 

今、スマホでこうやっていろいろ調べてもらいました。実は昨日、もう一つぜひみなさんに読んで、考えてもらいたいな~という資料がネットに上がっていました。今の20代、30代の人達が集まって、これからの未来に向けてどうしていったらいいのか?というものをまとめたものが、経済産業省から5月18日に出されました。

次の言葉で検索してみてください。

 

「不安な個人 立ちすくむ国家」

今日は取り扱いませんが、ぜひご家庭で読んでみてくださいね!

 

 

「自分で決める」

 

「自分で決める」ということに関係の深い言葉としては、「自律」という言葉があります。

 

みなさん、自律ってなにか説明できますか?

お隣の方とお話してみてください。

説明するというのは、2通りありますね。定義を話すこと、また、その事例について話す場合。どちらでも大丈夫です。

では、どうぞ。

 

ペアトーク

 

はい、ありがとうございました。

辞書の定義はこれです。

 

自律:自分の行為を主体的に規制すること。外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること。

 

一方、その対義語として、「他律」というものも調べてみました。

このように書かれています。

 

他律

自分の意志によるものでなく、他からの命令や束縛によって行動すること。

両方に入っている言葉があるな~と思いました。

それは、「行動」という言葉です。

 

すなわち、行動しない限りは、身につかないのが自律だということです。

トレーニングが必要だということです。

 

何もしていないのに、突然20歳になったから、自律というのはないわけです。

では、みなさん、どれくらい子どもたちが自律させられるようなことをやっていますか?

 

こんなことに気を付けているということをお隣の方とお話してもらえますか?

 

ペアトーク

 

はい、ありがとうございます。

 

トレーニングですから、やはり質、数ともに大切だということです。そして、時間もかかります。

 

でも、行動なのですから、しっかりとトレーニングすれば必ずできるようになります。

もし今までやってなかったとしたら、ぜひ今日から意識的にやってみてくださいね。

 

そんなことはわかっている。でも、それがなかなかできないんだ、という方も結構いらっしゃるんじゃないですか?

 

さて、もしそれができないのだとしたら、どんなことがそのことを阻んでいると思いますか?ちょっとお隣の方をお話していただけますか?

 

ペアトーク

 

さて、どうでしたか?

おそらく、どうなるかわからないから心配、とか、効率が悪い、とか、失敗してしまうんじゃないか?というところではないでしょうか。それはごくごく自然のことだと思います。

そう思うと、トレーニングさせずに、大人がやってしまうんではないでしょうか。だとしたら、子どもにトレーニングをさせるために、まず大人がやらなければいけないのことは、その心配や不安を克服すること、ということになりますよね。

 

脳の特質とトレーニング

 

ここで、脳の3つの特質とそれを踏まえたトレーニング法をお伝えします。

 

1つ目:脳は放っておいたら、マイナスのことを考えるようにできています。

まずはこれを自覚しておきましょう。

脳の特質として、これはその人の性格とかそういうことではなくて、放っておいたら、マイナスのことを考えるようにできています。放っておいたらマイナスのことを考えるようにできてます。ある研究によると、3倍くらいとも言われています。ということはですよ。子どもに何かを決めさせようとしたとき、自然な感じでいったら、3倍マイナスのことを考えてしまうということです。では、そんな状態だったら、どういう行動を取りやすいと思いますか?そうですよね、心配になって、やらせなくなってしまう可能性が多いんじゃないでしょうか。

ですから、もし子供に決める練習をさせられないということがありましたが、まずは大人が、マイナスのことを考えないようにするトレーニングをしなければならないということです。マイナスのことを考えないようにするトレーニングをしなければいけないということです。どんなトレーニングをすればいいか?それは脳の特質その2と3にヒントがあります。

 

2つ目:空白の原則です。脳は空白を自動的に埋めたくなるというものがあります。

脳は、空白があると埋めたくなるという原則あります。たとえば、今日のご飯はなんでしたか?と問われれば、そこに空白ができるので、脳は埋めようとする、すなわち、人によって差はありますが、考えてしまう、というものです。これが空白の原則です。

 

3つ目:短期記憶の特徴。新しい情報は上書きされる、というものです。人間の脳には短期記憶と長期記憶があるといわれています。その短期記憶の特徴として、新しい情報が来たら、その前の情報はかき消されて、新しい情報が上書きされるということです。テスト前などに、一生懸命覚えたとき、誰かに何か言われると、やめて~話しかけないで!となったことがあるのではないでしょうか。そういうことです。

 

これらを踏まえてトレーニングをするわけです。

どうトレーニングすればいいか。

意識は手に取りにくいので、トレーニングしにくいですよね。ですから、そういった意識をトレーニングしやすいものといえば、言葉です。言葉で脳をトレーニングするということになります。

どうやってトレーニングするかというと、できれば、プラスの言葉を使うということ。これがいいでしょうね。

でも、やっぱりふっと何気なくマイナスの言葉を使ってしまうことがありますよね。そんなときは、「疲れたけど、がんばった」「難しいけど、やりがいがある」「大変だけど、大きく変わるチャンス!」というように、~けど、・・・・で終わるということです。マイナスの言葉で終わるのではなく、「けど」、とつけることで、脳は続きがあるのかな?と思うわけです。そして、逆接であれば、逆のこと、要するにプラスのことかなと思うわけです。

 

そして、口に1回出していっただけなので、それは短期記憶です。ですから、それを上書きするプラスの言葉を使ってやれば、プラスの言葉が残るというシステムです。そして、それを繰り返しているうちに、マイナスをいってもプラスで終わるという思考が長期記憶として保存され、習慣化されていく、ということです。

 

ですから、もしマイナスのことをいってしまったとしても、プラスの言葉で終わるというトレーニングだということです。

 

ですから、自律のトレーニングをさせるとき、「心配だな~、でも、大丈夫」で終わればいいんです。「効率が悪いな~ でもこれが未来を生きる力をつけるんだ」「失敗しちゃうだろうな~でも、それが成長へのチャンス」という感じです。無理やりですか? そう無理やりです。トレーニングなんですから。そうやってトレーニングしていけば、少しずつプラスに目が向くようになって、子どもの決定にも寛容になれるという流れです。

 

とういうことで、今脳の3つの特性、マイナスのことを考えやすい、空白の原則と、短期記憶ということ。トレーニングとして、プラスの言葉を使う、マイナスの言葉を使ったとしても、プラスで終わるようにトレーニングするということをお話しました。

そして、ぜひ、子どもに「自分で決める」という経験をさせてください。

 

アドラー心理学の側面からみた「自分で決める。」

さて、次は「心理学」の面から見てみましょう。

私はアドラー心理学に8年前に出会い、それからずっと学び続けています。2014年に嫌われる勇気という本が爆発的に売れ、認知があがりました。みなさん、ご存知でしょうか。

「嫌われる勇気」という言葉だけみると、あまり感じないかもしれませんが、このアドラー心理学は、人が人でありながら、どのようにしたら幸せになれるのか?ということを考えている心理学だと私は思っています。

 

そのなかでも、特に多くの人の心をつかんだのは、「目的論」という考え方だったように思います。

目的論、という言葉を聞いたことがありますか?

この考え方が「自分で決める」ということにつながると私は思っています。

 

目的論がどういうものか?

これは対比させながらお話したほうがよいかな、と思います。

 

目的論と対比させるのは、原因論です。

おそらく原因論のほうが皆さんにはなじみがあるのではないでしょうか。

「~~だったから、こうなった。」

「こんなことがあったから、こうなった。」

行動にはその行動のもととなる原因があるはずだ!ということです。

これはよいとされていることも、悪いとされていることも同じです。

「あんな親に育てられたから、~になったんだ。」

「さすが、あの親に育てられれば、~になるよね。」

これはどちらも原因論です。

 

なんとなくお分かりいただけましたでしょうか?

では、たとえば、子どもが宿題をやらずに塾にいったとしましょう。私はためしに原因論的にこう聞いてみました。

 

「なんでやってこなかったの?」

 

さて、子どもはどう答えると思いますか?

ちょっと隣の人とお話してみてください。

 

ペアトーク

 

さて、いかがでしょうか。どんな答えがでましたか?

 

会場に質問

 

なるほど~ きっといろいろあると思います。

 

私の時はこうでした。

時間がなかったから・・・

習い事が・・・

どこやったらいいかわからなくって・・・

やろうと思ったら、ノートがなくて・・・・

友だちがあそびに来ちゃって・・・

やろうと思ったら、お母さんが買い物にいくって・・

 

出てくる出てくる、言い訳のオンパレード。

あ、一応これ1週間ありましたし、やってくるページは2ページですからね。絶対にできるんです。

 

これ、全部原因論なのわかりますか?

~という原因があったから、・・・できなかった。

というやつです。

みなさん聞いていて、こんな感じがしませんか?

「全部、人のせい。私は犠牲者」ということは、とうていそこには、原因論で関わった場合、「自分で決める」というトレーニングにはなりにくいということです。

また、一方で、全て「過去に起きた出来事」だということに気づきましたか?

過去のことは変えられますか?

過去の出来事は変えられませんよね。変えられない答え、言い換えるなら、解けない問題に対して、自分から何かをやろうと思えると思いますか?

難しいですよね。

要するに、原因論で考えると、「自分で考える、ということ、自分で考えよう」という心理になりにくいということです。

 

これと逆になるのが、目的論です。

行動を起こすとき、過去にあった原因が元のエネルギーになっているのではなく、そのとき自分がやりたかった、つまり未来にある達成したい!という目的がエネルギーとなって行動を起こすという考え方です。

違いが分かりますかね。

過去から押されて行動するのが原因論

未来に引っ張られる感じ、自分でたぐりよせるのが目的論という感じです。

 

原因論が悪いといっているのではありません。

仕事のことや、科学的なことなどは原因論でいいのだと思いますが、人間の心については、原因論はあまり建設的ではないのではありませんか?ということです。

 

では、さっきの宿題の場合、なんて聞けばよかったと思いますか?

そうですね。「あなたは宿題をやらずに、なにをやりたかったの?」って。

当然子どもは瞬時に違いを把握しますね。あれ、用意しておいた言い訳が使えない感じになったぞって(笑)

だから、ほとんど最初は答えられないことが多いですね。

そこで、こう聞くわけです。「頭悪くなりたいの?」と(笑)

そうすると、「違う」といいます。

はい、この時点で、大きな違いがでてきたがわかりますか?

「違う」という自分の意志がでてきたわけです。

「じゃあ、どうなりたいの?」「~になりたい。」「あ、そうなんだね~ じゃあどうする?」と聞くわけです。主体が子どもになっているのわかりますか?

未来に向かっている感覚、わかりますか?

そして、子どもが自分の目標を決めているのが分かりますか?

 

このことから考えると、原因論で物事を考えることよりも、目的論で物事を考えた方が、「自分で決める」という力のトレーニングになると思いませんか?

 

ということで、人間の行動の源を「目的論として考える」そうすると、自分で決める、というトレーニングにつながるということがお分かりいただけたでしょうか。

 

まとめ

ということで、今回3つのお話をさせていただきました。

未来を生き抜くチカラってなんだろう? いろいろあるけれど、今日は自分で決める、ということを話しました。

自分で決める、というトレーニングをするにあたって、脳の特質と心理学について。

 

2つ目は、脳の話。脳の特質が2つ。放っておくとマイナスのことを考える、空白の原則、短期記憶の特徴。トレーニングとして、プラスの言葉を使う、マイナスの言葉を使ってもプラスで終わる。

3つ目は、心理の話。原因論と目的論。目的論で考えることで、意志を感じることができ、自分で決めるトレーニングになる。ということ。

 

さて、みなさん、今日の話を聞いて、特に印象的だったこと、感じたこと、気づいたことはなんでしたか?3分ほど個人で振り返る時間を差し上げますので、一度振り返ってみてください。その後、今日ずっといっしょに学んできたペアで感想をシェアしようと思います。

では、まず個人思考の時間です。

 

個人思考

 

では、二人で話をしてみてください。

 

ペアトーク

 

みなさん、そんなことはわかっている、という方もたくさんいらっしゃったかと思いますが、「わかる」と「できる」とは違いますからね。ぜひ「できる」というレベルまでもっていってもらいたいですし、それを習慣化させたいですね。

できるようになるまでの4段階があります。こんなことも念頭に置いて、取り組んでみてください。

 

今回脳の話は心の話をしました。こういった話をすると、すぐに子どもにやろう!という方がいらっしゃいます。でも、ここで覚えておいていただきたいのは、決して、子どもに親が思っていることをやらせるためのものではない、ということです。

常に「私たちは仲間であり、お互いがかけがえのない存在であり、信頼し合える関係である」ということを念頭に置くことがとても重要です。それなしにやってしまうと、ただのコントロールのための学びになってしまいますからね。対等、尊敬、信頼。これらを必ず踏まえてくださいね。

 

さて、これからの未来、だれも経験したことがない未来が待っています。今日お話ししたことがどれくらい未来まで通用するかは私もわかりません。だからこそ、こうやってみなで学び続けていくことが何よりも大切なのだと私は思っています。

 

本日はありがとうございました。